パンの木を植えて

主として数学の話をするブログ

barrier cone が凸錐であること - Ex2.38(a)

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\A}{\mathbb{A}} %アフィン空間 \newcommand{\C}{\mathbb{C}} %複素数 \newcommand{\F}{\mathbb{F}} %有限体 \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %自然数 \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} %有理数 \newcommand{\R}{\mathbb{R}} %実数 \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} %整数 %%% 2項演算 %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \]

職場の先輩に「君は賢いね.でも賢いという印象だけだと必ずしもプラスにはならないよ.頼りになるって思ってもらうことを目指すといいよ」と言われました.

確かに,「賢いね」というのは褒めてるとは限らない感じがしますね.嫌味っぽいというか,若干僻みっぽい感じがあってもおかしくない.

とりあえず頼りになるブログを目指しましょうかね!


さて今回も Boyd, Vandenberghe『Convex Optimization』を読んでいきます.

書影を得るためにAmazonのリンクを貼っていますが,この本は著者によりPDFが無償で公開されています.興味のある方は是非読んでみてください.

今回やってくのは演習2.38の(a)です.


問題文

The barrier cone of a set $C$ is defined as the set of all vectors $y$ such that $y^ T x$ is bounded above over $x \in C$.
In other words, a nonzero vector $y$ is in the barrier cone if and only if it is the normal vector of a halfspace $\{ x \mid y^ T x \leq α \}$ that contains $C$. 
Verify that the barrier cone is a convex cone (with no assumptions on $C$).
Ex 2.38(a)


問題の背景

集合から凸錐を構成せよというシリーズの問題のひとつです.

barrier cone というものを定義しまして,それが凸錐(convex cone)であることを示せと言っています.

barrier cone の日本語訳はちょっと,わかりませんでした.


回答

定義について

何か記号が必要ですね.

集合 $C$ の barrier cone を取り敢えず $b(C)$ と書くことにします.


さてこの問題ですが,barrier cone の定義がわかりにくいですね.

問題文を素直に読むと

(1) $y \neq 0$ and $y \in b(C)$

(2) ある $α \in \mathbb{R}$ が存在して $C \subseteq \{ x \mid y^ Tx \leq α \}$

の二つが同値だと言っているように見えます.

$α$ は問題文では明示的に量化されていないので,推測なんですけど.


うーん,$y$ が nonzero という仮定は実質的な意味がないんですね.

半空間を定義する法線ベクトルがゼロであっては困るから,ゼロでないとわざわざ断っているのだと思いますが,それなら半空間という言葉を避ければいい気がします.

まあ $y^ T x$ が有界ならいいわけですから,当然 $0 \in b(C)$ だとは思うんですけど.ちょっとわかりにくい.


まだ問題があります.

インターネットで barrier cone の定義を調べると $b(C)$ は双対錐 $C^ *$ の部分集合だとはっきり書いてあります.

つまり

$$ b(C) = \left\{ y \in C^* \mid \sup_{x \in C} y^T x < \infty \right\} $$

だと主張しています.

$$ b(C) = \left\{ y \in C^* \mid \exists α \forall x \in C \quad y^T x \leq α \right\} $$

と書いても構いませんが.

元の問題文の定義だと $b(C) \subseteq C^*$ であることが見づらいので,これはあまり良くない書き方ですね.

誤植でしょうか.


問いへの回答

定義がはっきりすれば,解くのは難しくありません.

ノートを貼ってしまいます.

この記事で $b(C)$ と書いているのに,ノートでは $\mathrm{Bar} \ C$ と書いていますが,気にしないでください.

これで証明ができました.


あとがき

この本,意外と定義の書き方が雑ですね.

この本以外の凸最適化の本を持っていないので,正直かなり心にきます.