Shoup『A Computational Introduction to Number Theory and Algebra』を読んでいきます.
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今回やるのは演習問題5.4です.
問題文
原文はこちら.
For each positive integer $k$, let $P_k$ denote the product of the first $k$ primes. Show that $φ(P_k) = \Theta(P_k / \log \log P_k)$ (here, $φ$ is Euler's phi function).
Exercise 5.4
訳すとしたらこうです.
各整数 $k$ に対して,最初の $k$ 個の素数の積を $P_k$ とする.このとき $φ(P_k) = \Theta(P_k / \log \log P_k)$ であることを示せ.ただし $φ$ はオイラーの φ関数である.
回答
小さいほうから $k$ 番目の素数を $p_k$ と表すことにします.
そうすると $P_k$ は
$$ P_k = \prod_{1 \leq i \leq k} p_i $$
と表すことができます.このとき,同時に
$$ φ(P_k) = P_k \prod_{1 \leq i \leq k} \left( 1 - \frac{1}{p_i} \right) $$
が成り立ちます.
ここまではいいですね.
次にどうするかですが,Mertensの定理を使いたいです.
そこで,$φ(P_k)$ の上記の式をMertensの定理を使って書き換えると,
$$ φ(P_k) = \Theta(P_k / \log p_k) $$
であることがわかります.
後は,$p_k$ の大きさを $P_k$ を使って評価すればよいです.
どうやるかですが,チェビシェフのシータ関数に対する漸近評価を使えば
$$ \log P_k = \sum_{2 \leq p \leq p_k} \log p = \Theta(p_k) $$
が得られます.したがって $p_k = \Theta(\log P_k)$ なので,
$$ φ(P_k) = \Theta(P_k / \log \log P_k) $$
が成り立ちます.
おしまい.
感想
Mertensの定理の応用としてすぐ示せました.
今回は $n = P_k$ に対する評価だけですが,次の問題でこれを一般化します.