パンの木を植えて

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冪乗根の個数を数える - Ex17.3(a)

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\A}{\mathbb{A}} %アフィン空間 \newcommand{\C}{\mathbb{C}} %複素数 \newcommand{\F}{\mathbb{F}} %有限体 \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %自然数 \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} %有理数 \newcommand{\R}{\mathbb{R}} %実数 \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} %整数 %%% 2項演算 %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \]

今日もシルヴァーマン『A Friendly Introduction to Number Theory』の演習問題をやっていきます.

邦訳がこちら.

原著はこちら.

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\R}{\mathbb{R}} \newcommand{\C}{\mathbb{C}} \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} \newcommand{\F}{\mathbb{F}} \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %%% カリグラフィー %%% \newcommand{\calf}{\mathcal{F} } \newcommand{\calg}{\mathcal{G} } %%% 引数を取るもの %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \newcommand{\im}{\operatorname{im} } \]

問題文

この章で私たちは $m$ を法とした $b$ の $k$ 乗根をどのように解くかについて述べた.しかし,あなたはおそらく $b$ の $k$ 乗根が1つよりも多くあり得るのか自問したことだろう.実際,それは可能である!たとえば,$a$ が $m$ を法として $b$ の平方根であれば,明らかに $-a$ も $m$ を法として $b$ の平方根になっている.

(a) $b,k,m$ を

$$ \gcd(b,m) = 1, \quad \gcd(k,φ(m)) = 1 $$

を満たす整数とする.$b$ は $m$ を法としてただひとつの $k$ 乗根をもつことを示せ.

(b) 代わりに $\gcd(k,φ(m)) > 1$ とせよ.$b$ は $m$ を法として $k$ 乗根を持たないか,あるいは少なくとも2つの根を持つことを示せ.(現時点までに扱ってきた題材では,この問題は難問である.)

(c) $m=p$ が素数のとき,例をいくつか調べ,$p$ を法とした(少なくとも1つはあると仮定したときの)$b$ の $k$ 乗根の個数の公式を見つけることに挑戦せよ.

問a の回答

絶対その方がわかりやすいので,群論の言葉をバンバン使っていきましょう.


単数群 $(\mathbb{Z} / m \mathbb{Z})^{\times}$ のことを,以降では簡単のために $\mathbb{Z}_m^*$ と書くことにします.ここでは $p$ 進数は出てこないので,まあ紛らわしくはないでしょう.

まず $k$ 乗する写像 $φ: \mathbb{Z}_m^* \to \mathbb{Z}_m^*$ を考えます.$φ(x) = x^ k$ です.$\mathbb{Z}_m^*$ はAbel群なので,これは群準同型です.$\ker φ \subseteq \mathbb{Z}_m^*$ は部分群になっています.

$g \in \ker φ$ が与えられたとします.$g$ の位数を $a$ とします.

  $g^ k=1$ より $a$ は $k$ の約数です.

  また,$g \in \mathbb{Z}_m^*$ なので $a$ は $φ(m)$ の約数でもあります.

  したがって仮定から $a=1$ です.

ゆえに $\ker φ = 1$ であり,$φ$ は単射です.

$φ$ の値域と定義域は同一の有限集合なので,$φ$ は全射でもあります.

つまり $φ$ は全単射です.これで示すべきことが言えました.

(注意: 仮定から $b$ は $\mathbb{Z}^*_m$ の元です)


感想とまとめ

この本は群論を説明していないのですが,この問題って群論知らなくても解けるんでしょうか.

解けないと思うなぁ.

おもしろい本なんですけど,self-containedではないですね.