パンの木を植えて

主として数学の話をするブログ

数学は羊の代わりになるか?

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\A}{\mathbb{A}} %アフィン空間 \newcommand{\C}{\mathbb{C}} %複素数 \newcommand{\F}{\mathbb{F}} %有限体 \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %自然数 \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} %有理数 \newcommand{\R}{\mathbb{R}} %実数 \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} %整数 %%% 2項演算 %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \]

その昔ヴォルフスケールという男がいました.

かれは失恋して人生に絶望したのですが,たいへんに几帳面な男だったので自殺の計画を綿密に立て,ある夜の決められた時刻かっきりに死ぬことにしたそうです.

しかし,かれはたいそう事務処理能力の優れた男だったので自殺予定時刻よりだいぶ早く身辺整理が終わってしまい,暇つぶしに数学の本を読んでいました.

しかし,まあお約束というか,かれは数学に夢中になってしまい,気が付けば自殺予定時刻をとっくに過ぎてしまっていました.そしてかれは,さっきまで心を占めていた絶望がすっかり消え去っていることに気づいたのでした.

その本はFermatの最終定理(その当時は定理ではなく予想)についての本だったそうです.

数学の力にあらためて気づかされたかれは,自分の命を救ってくれたFermatの最終定理を最初に解いたものに賞金を授与することにしました.


……という昔話が整数論界隈にはあります.サイモン・シンの本とかに書かれているこのエピソードは結構有名で,知ってる方も多いかと思います.

現実的には,死ぬほど憂鬱なときに数学書を読むなんて不可能であるはずで,この逸話が本当かどうかはちょっと疑わしいなと私は思っていますが,お伽噺としてはよいものだと思います.


しかし,具体的に死ぬ日と方法の計画を立てちゃうくらい切羽詰まることは稀とはいえ,夜は気持ちが沈むものですね.

さっさと寝てしまえば良いのですが,そういうときってなかなか寝られないものです.


西洋のひとびとは「寝れないときは羊を数えると良いよ」なんて言ったそうですが,羊を飼った経験が文化的にほとんどない民族にとっては,効果なさそうですね.

だだっぴろい野原に数えるのも嫌になるくらいたくさんの羊を飼っていて,メェメェ鳴きながら動き回るもこもこの羊たちを毎晩数えなくてはならない……という文脈があるから「羊を数えると眠くなる」のであって,1頭2頭ときびきび数えていたのではむしろ目が冴えてしまいます.

羊なんて数えててはダメです.

これからは,数学書を読んでいくべきでは?(論理の飛躍)


そういうわけで今回は,この故事にあやかって,数学を羊代わりにする企画をやっていこうと思います.

せっかくなので羊の代わりに素数を数えようみたいな企画もやってみたいんですけど,あんまり最初から整数論に限定するのもやりづらいかと思ったので,今回は結び目をいじくっていきます.

問題と答え

次の結び目が自明であることを示せという問題です.

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出典はアダムス『結び目の数学』練習問題1.3.


答えですが,1枚の図にまとめることができました.

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感想

結び目変形タイプの問題は2度目ですが,正直もうだいぶ飽きちゃいました.

特にこの問題はかなり自明で,もう少し骨のありそうな問題を選ぶべきでしたね.

こんなんじゃ全然眠くならないよ!

でも「深夜にいじくるにふさわしい数学の問題」という企画はまたやりたいと思います.(なぜかというと,この記事は深夜に書いているからです.)