latest update: 2024.03.13
おはようございます.
今回のテーマは「本をタダで読む方法」です.
いかにも非合法なイケナイ感じがするタイトルですが,ところがどっこい合法です.
なんでそんなことが可能なのかというと,実は洋書のなかには著者が出版社公認でタダで公開している本が存在しているからです.だから,そういう本を選んで(電子書籍として)読めばタダなわけです.
今回は,そんな本をいくつか紹介しようと思います.もちろん全部ではないですが.
2024.03.13 追記
合法的に無料で読める数学の本をまとめて,オンラインブックを作りました.この記事はもう更新しませんが,今後はこちらを更新していきます.
なお英語で書いていますが,少ないながら日本語のリソースも紹介しております.
- 2024.03.13 追記
- Easley, Kleinberg 『Networks, Crowds, and Markets』
- Shoham, Leyton-Brown 『Multiagent Systems』
- 『Parameterized Algorithms』
- Williamson, Shmoys『The Design of Approximation Algorithms』
- 『Algorithms for Decision Making』
- Riehl『Category theory in Context』
- Leinster『Basic Category Theory』
- Fulton『Algebraic Curves』
- Boyd, Vandenverghe 『Convex Optimization』
- Hatcher 『Algebraic Topology』
- Altman, Kleiman 『A term of Commutative Algebra』
- Shoup 『A Computational Introduction to Number Theory and Algebra』
- Erickson『Algorithms』
- Essential Coding Theory
- Stein『Elementary Number Theory』
- Morin『Open Data Structures』
- Rosulek『The Joy of Cryptography』
- まとめと感想
Easley, Kleinberg 『Networks, Crowds, and Markets』
https://www.cs.cornell.edu/home/kleinber/networks-book/
離散数学の本.グラフ理論や計算理論の,産業的な応用について書かれています.著者の Kleinberg はアルゴリズムデザインを書いたひとですね.ちなみにこの本は邦訳が共立出版から出ていますが,超分厚いので読むのはともかく持ち歩くのが大変.
Shoham, Leyton-Brown 『Multiagent Systems』
https://www.masfoundations.org/index.html
計算機科学系の本.ゲーム理論と計算理論の交錯する分野である,計算論的ゲーム理論の本です.ただし演習問題が一切ありませんので,注意してください.
『Parameterized Algorithms』
https://www.mimuw.edu.pl/~malcin/book/
計算機科学系の本.計算理論のうち,パラメータ化計算量についての本です.この本に限らず,著者のひとりの Fedor V Fomin は著書を無料公開してくださっており,他にも『Kernelization』 や『Exact Exponential Algorithms』 などが無料で公開されています.
Williamson, Shmoys『The Design of Approximation Algorithms』
https://www.designofapproxalgs.com/download.php
近似アルゴリズムについての本.
『Algorithms for Decision Making』
オペレーションズリサーチに関係する本.分野がよくわかっていません.
Riehl『Category theory in Context』
圏論の本です.無料で読むことができ,かつ評判も良いです.
Leinster『Basic Category Theory』
https://www.maths.ed.ac.uk/~tl/bct/
圏論の本です.この本に限らず,著者の Tom Leinster は著書を無料公開しています.
Fulton『Algebraic Curves』
(書影なし)
https://dept.math.lsa.umich.edu/~wfulton/
代数幾何の本.スキーム論を使用しない代数幾何の教科書として昔から有名な本です.
Boyd, Vandenverghe 『Convex Optimization』
https://web.stanford.edu/~boyd/cvxbook/
最適化の本.凸最適化についての有名な教科書です.
Hatcher 『Algebraic Topology』
https://pi.math.cornell.edu/~hatcher/#ATI
位相幾何の本.代数トポロジーについての有名な教科書.非常に分厚く,紙だと超重いです.電子書籍で読めるのはありがたいですね.Hatcher の著書は無料公開されているものが多いです.
Altman, Kleiman 『A term of Commutative Algebra』
(書影なし)
https://dspace.mit.edu/handle/1721.1/116075.2
代数学の本.可換環論の教科書です.無料なので便利.
Shoup 『A Computational Introduction to Number Theory and Algebra』
https://jeffe.cs.illinois.edu/teaching/algorithms/
離散最適化の本.クリエイティブコモンズ・ライセンスで公開されている.
Cambridge Univ Pressから.整数論および代数学の本.
Erickson『Algorithms』
Essential Coding Theory
符号理論の本.
Stein『Elementary Number Theory』
数論の本.この本に限らず著者の William Stein は著書を無料公開しています.
Morin『Open Data Structures』
データ構造についての詳しめの本.
Rosulek『The Joy of Cryptography』
暗号理論の本.語り口がフランクで楽しい.
まとめと感想
うまく分野が被っていれば,無料の本だけで勉強することも夢ではありませんね.
これは私の感想ですが,なぜか計算機や情報系の本が多い気がしています.情報系のひとにはデータを無料公開する文化でもあるのでしょうか.いずれにせよありがたいことです.
FreeComputerBooks.com というサイトがあって,さらに大量の本がそこにまとめられていますので,興味のある方は覗いてみてください.すべて確認したわけではないですが,あのサイトは合法な本が多いです.
まとめると,要点は3つです.
1つは,どれも洋書であること.日本語の本で,合法的にタダで読める数学の資料というのは今のところ講義動画と講義ノートくらいしかありません.講義ノート等でもありがたいことには変わりませんが,書籍となるとやはり有料のものしかないようです.したがって,英語が読める必要はあります.
日本語の講義ノートでも良いものはあって,たとえば岡本先生の講義ノートはすごく充実しています.コメント返信コーナーまであって楽しいので,離散数学に興味のある方にはぜひ一読を勧めます.
しかし,やはり量が限定されるのは否めないので,英語が読めるようになった方がいいでしょう.英語の方が講義ノートもたくさんありますからね.まあ慣れです.
もう1つは,PDF形式であることです.Amazonから電子書籍を買うと Kindle 形式ですが,kindleで数学書を読むのは結構大変です.素直にPDFで読んだ方がいいでしょう.
最後の1つは,読む際に大きめの端末またはディスプレイが必要であるということです.これは別途購入する必要があるため,初期費用が少しかかります.
あと,書き忘れていましたが,お金に余裕があるようなら購入して著者や出版社を支援するべきような気もします.(そのようにお願いされている本もありました)