演習問題をやります.
今回は,Strogatz 『非線形ダイナミクスとカオス』より,恋愛問題の続きをやっていきます.
前回は,ロミオとジュリエットの恋愛感情の推移をモデル化して,そして連立微分方程式の係数の組合せにどんな意味があるのかを考察するところまでやりました.
前回の記事はこちらです.
引き続きこのモデルを考察していきましょう.
問 5.3.2
$\dot{R} = J, \dot{J} = - R + J$ により記述される恋愛事情を考えよう.
考えていきましょう.
式の意味を忘れているかもしれないので,前回の絵を再掲しておきます.
問 a
(a) このロミオとジュリエットのそれぞれの恋愛志向性の特徴を述べよ.
まずロミオ君から行きましょう.
$\dot{R} = J$ なので,$R$ の項がありません.つまりロミオ君のジュリエットへの恋心は,ジュリエットの反応だけで決まっています.さらに,ジュリエットがロミオを好きなら,それに応じるようにロミオもジュリエットが好きになります.すごく素直な子です.騙されやすいタイプかもしれません.
次にジュリエット.
$\dot{J} = - R + J$ です.$R$ の係数がマイナスであることが気になります.ロミオがジュリエットのことを好きになると,途端に幻滅し始めるようです.簡単に手に入る男はつまらないと思っているタイプです.
問 b
原点にある固定点の安定性を分類せよ.この安定性は恋愛事情に関して何を意味するか?
5章2節の「線形系の分類」に従えばすぐに解けます.
まずは係数行列を $A$ とします.
これは線形系なので実際に解くことができますね.解いてしまいましょう.そのために $A$ の固有値と固有ベクトルを求める必要があります.
実際に計算して結論まで書いた図を次に示しました.
ポイントは,固有値を $\alpha$ とし,$\alpha$ に属する固有ベクトルを $v$ とするときに $v e^{\alpha t}$ が($t$ の関数として)特殊解になっているということです.
この場合,固有値は複素数であるため,固有解はありません.スパイラルになります.固有値の実部が正であるか負であるかによってスパイラルの安定性が変わり,今回は正なので不安定スパイラルになります.
今回は丁寧にやりましたが,係数行列 $A$ の行列式とトレースさえわかれば安定性がわかります.
恋愛事情に関していえば,愛憎うずまく修羅場が顕現することがわかります.
2人は離れたり惹かれあったり憎みあったりを繰り返します.そして繰り返すたびに激しくなります.
さすがに無限大に発散するわけはないと思うので,その前に仮定の微分方程式が満たされなくなるはずです.そのときに相図のどこに解があるのかは予測できませんが,どちらかがどちらかを激しく憎んでいるか,あるいは激しく愛しているはずであることはわかります.
問 c
$R(0) = 1, J(0)=0$ として,$R(t)$ および $J(t)$ を $t$ の関数として描け.
これはおそらく陽に求めよという意味ではなくて,スパイラルの絵を描けという意味だと思います.適当に点をとってその点におけるベクトル場の向きを求めたらいいでしょう.
関数として陽に求めることにも挑戦しましたが,けっこう面倒です.
感想とまとめ
線形系なので解いてしまえばよかろうなのだ……!という問題.
実際に本でも解いていますし,解く(具体的に求積する)のがいちばんの早道のような気がします.わかりやすいアプローチでもあります.
この恋愛問題は実は全部で6問ありますが,3問目以降も係数行列の行列式とトレースを求めればいいだけっぽいので,紹介はしないことにします.