『ショーシャンクの空に』という映画を観ました.
そこで主人公と仲の良いある囚人が,仮釈放の審査を受けるシーンがありました.どうも就職面接のような規則になっているらしく,「更生したか?」とか「後悔してるか?」とかいった質問が口頭でなされて,それに答えることによって審査がなされます.十分更生したとみなされれば仮釈放の許可が出ますし,まだまだと判断されれば引き続き塀の中ということになります.
その審査の描かれ方が印象的でした.
まだ収監されて日が浅いうちは,審査のたびに「俺はもう更生してる!いつでも社会生活を送れるぜ!めちゃくちゃ後悔してる!もうやらないよ!」と強くアピールするのです.しかし許可は下りません.
ところが収監されて何十年にもなると,そうしたアピールを一切しなくなるのです.更生したかと問われても「わからない」と答え,「後悔しているか」と問われても「あの頃はガキだったなと思うよ」などと返答するだけ.しまいには「釈放されようとされまいとどうでもいい」とまで言います.その結果どうなるかというと……話の流れからだいたい予想がつくかと思いますが,仮釈放が決まるのです.
この話ですが,禅宗の僧侶である慧能(えのう)のエピソードとよく似ています.
師匠である弘忍が,ある日弟子たちに「悟りの心境をもっともよく詩に表せたものを後継者とする」と言いました.優秀な兄弟子が「心は鏡のように澄み切っていて,チリひとつない」みたいな詩を作ったのですけど,不合格.対して慧能は兄弟子の詩を元にして「鏡なんて無い.チリも最初から無い」みたいな舐め腐った詩を書き,みごと後継者として認められた……という話です.
本当か嘘かはわかりませんが,「悟った!悟った!」と主張してるうちは全然悟ってないということが言いたいのだと思いますので,先の仮釈放の話によく似ています.
就職面接でも同じことを考えて実行している面接官がいるかもしれないですね.「ぜひ御社に就職したい!」と張り切って言うやつはむしろだめで,「わかりません…」と言ってる候補者の方がむしろ良いかもしれない,とか.いかにもありそうな話です.こういうことを考えすぎると面接で何喋っていいか困ってしまいそうですけど.
それはそうと更新報告です.
「研究室の選び方」という項目を設けて「学生が論文を書かせてもらってるところに行こう」と書いていたのですが,削除しました.なぜかというと,分野によっては通用しないこともあるだろうと思ったからです.院に一度在籍していただけの若輩が書いて良い内容ではないと思ったので消しました.すみません.
こちらの方でも,『楕円曲線論入門』の要約記事へのリンクを貼ったりしました.要約を書くにはふつう読んでいることが前提ですが,数学の本の場合は全体を読まずにまず要約を作ってしまうことが多少有効なような気がしていて,実際にやって試してみようと思っています.