パンの木を植えて

数学の話をしたり,しなかったりする日記

微積分 - Calculus -

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\A}{\mathbb{A}} %アフィン空間 \newcommand{\C}{\mathbb{C}} %複素数 \newcommand{\F}{\mathbb{F}} %有限体 \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %自然数 \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} %有理数 \newcommand{\R}{\mathbb{R}} %実数 \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} %整数 %%% 2項演算 %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \]

latest update: 2022.06.30

2022.06.30 分野ツリーを削除

2022.06.14 黒田先生の講義ノートを追加

2022.06.12 分野ツリーを掲載

2022.06.02 書評部分を変更.講義ノートを紹介しないことにしました.

2022.04.03 公開

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\R}{\mathbb{R}} \newcommand{\C}{\mathbb{C}} \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} \newcommand{\F}{\mathbb{F}} \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %%% カリグラフィー %%% \newcommand{\calf}{\mathcal{F} } \newcommand{\calg}{\mathcal{G} } %%% 引数を取るもの %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \newcommand{\im}{\operatorname{im} } \]

英語では Calculus と言います.Real Analysis(実解析) と呼ばれることもありますが,Real Analysis と書いてある本にはルベーグ積分まで書かれていることがあるので要注意です.

前提知識

多変数の微積の話になると,線形代数をある程度学んでいることが前提になります.

graph TB S(START) --> A(線形代数) S --> C(1変数の微積) C --> D(多変数の微積) A --> D  subgraph C D end


概要

級数や広義積分や収束発散といった無限が絡んだ対象は,正しく取り扱わないと容易にミスをするので気を付けないといけない.その取扱い方を学ぶのが大学の微積分学です.

歴史的には,物理学(特に力学)に動機があります.位置を $x$ とすると,$x$ の時間による微分は速度であり,$x$ の二階微分は加速度となることからも,物理における微分の重要性が解ってもらえるとおもいます.もっと応用例が欲しければ,力学系についての本を読むことをお勧めします.

ところで,イプシロンデルタ式の極限・収束の定義のありがたみがわからなくて困惑したという声をよく聞きます.ああいう定義は高校ではありませんでしたし,大学の微積で青天の霹靂のように初めて登場するもので,たしかに慣れるまで修業が必要な面倒なものです.しかし人間の連続性・微分可能性についての直観はアテにならないので,必要なものなのです.

歴史的にも,イプシロンデルタ式の定義は最初からあったわけではありませんでした.最初は素朴な直観的定義に頼るひとも多かったようです.しかし「すべての連続関数は十分小さな近傍で微分可能である」というトンデモない主張をするアンペールの「定理」が「証明」されてしまい,結構な数の数学者に受け入れられてしまったという大不祥事が起こってしまったことで,イプシロンデルタ式の定義の必要性は誰もが認めるところとなりました.「連続だがいたるところ微分可能でない関数」をワイエルシュトラスが考えたのは,この「アンペールの定理」を反証するためであったといいます.

というわけで,イプシロンデルタ式の定義を大学で習うのは,ワイエルシュトラスをはじめとする怖いおじさんたちが微積の基礎をがっちりと築いたことに起因しており,微積を習う以上回避できないものなので頑張って慣れてください.慣れればもっともらしく思えるようになります.


文献

書籍
斎藤『微分積分学』

東京図書より.初学者向けの本です.粗雑な本ですが,しかし実解析という沼の表面を駆け抜けるにはこれくらいでもいいのではないかという気がするので紹介することにしました.初学者が重箱の隅でつまずかないようにシンプルな構成になっています.

粗はもちろんあって,重積分の変数変換公式を厳密に証明していません.しかしあれは初学者には難しいので仕方がないでしょう.

あとベクトル解析の説明が雑すぎるという問題があります.多変数の微積については,後で紹介するTrenchの本が割と詳しいので必要なら参照するといいでしょう.しかし,あまり神経質になることもないと思います.

必要になったら,そのときに改めて勉強すればよいのです.


杉浦『解析入門 1』

東京大学出版会から出版されている,詳しめの解析の本です.有名な本なので一応紹介していますが,別にお勧めはしません.

ぶっちゃけて言いますと,この時点でこの本を読破する必要は全くありません.この本を読む余裕があるなら,凸最適化とか力学系等の応用分野を学んだり,あるいはFourier解析や複素解析などのより進んだ理論を学んだりした方が良いです.

理由は,その方が絶対楽しいからです.

最初からこの本で微積を勉強しようなんていうのは,苦行僧の発想です.確かに己を鍛え上げるのは大事ですが,そんなにストイックに厳密さを追求していては疲れてしまいます.

適度にいい加減にやりましょう.後回しでもいいのです.


Trench『Introduction to Real Analysis』

無償で公開されている教科書です.この本の著者のTrench先生は微分方程式論の本も書いているひとで,そちらも無料なのでよかったらどうぞ.

内容的には,過不足なくまとまっていると思いました.570ページもありますが,しかし多変数の場合と1変数の場合を同じ本にまとめたのですからこんなものでしょう.

微積分学は厳密に展開しようとすると,とかく学生に「当たり前のことをわざわざ手間をかけてやっている…?」と誤解されてしまいがちですが,この本では初等関数の厳密な構成を端折ったりしていて,厳密さと読みやすさのバランスを取るために苦心している感じがします.


講義ノート
黒田紘敏『微分積分学入門』

私は通読したことがありませんが,無料で(しかも日本語で!!)読める講義ノートとして紹介します.数学を始めて学ぶ学生向けの注意書きが豊富で,とても親切な感じがします.


次に学べる分野

graph TB B(微積) --> C(微分方程式論/力学系) B --> D(位相空間論)


微分方程式論と力学系について学べば,微積と物理学との関連の一端を知ることができます.生物学等でも微分方程式は使いますね.微積に加えて線形代数の知識が必要です.


位相空間論について学べば,収束について議論するためのより洗練された理論を知ることができます.位相空間論は地味な分野ですが,今後学んでいくにつれその重要性が明らかになるでしょう.