パンの木を植えて

主として数学の話をするブログ

Shafarevich 『Basic Algebraic Geometry』を読む - Ch1-1.2 Rational Curves #1

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\A}{\mathbb{A}} %アフィン空間 \newcommand{\C}{\mathbb{C}} %複素数 \newcommand{\F}{\mathbb{F}} %有限体 \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %自然数 \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} %有理数 \newcommand{\R}{\mathbb{R}} %実数 \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} %整数 %%% 2項演算 %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \]

今回はShafarevichの続きを読んでいきます.


本文に入る前にお知らせです.

今までは毎日投稿をしていましたが,毎日投稿は私にはどうやら無理だったようです.YoutuberやVtuberの偉大さがわかりました.

毎日まじめに1つブログ記事を書いても,現状維持にしかならないんですよ?ストックを増やそうとすると毎日2記事書かないといけないんです.

やってみましたが,無理にやろうとすると記事の質が著しく下がって数学の話ができなくなることが判明しましたので,潔く諦めることにします.

今後は投稿頻度を適度に下げて,なるべく数学的な記事を書けるように頑張っていこうと思います.

よろしくお願いします.

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\R}{\mathbb{R}} \newcommand{\C}{\mathbb{C}} \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} \newcommand{\F}{\mathbb{F}} \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %%% カリグラフィー %%% \newcommand{\calf}{\mathcal{F} } \newcommand{\calg}{\mathcal{G} } %%% 引数を取るもの %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \newcommand{\im}{\operatorname{im} } \]


1.2 Rational Curves

rational の定義と具体例

まず,平面3次曲線 $C: y^ 2 = x^ 2 + x^ 3$ が取り上げられます.実数係数として描画しますと,こんな曲線です.

この図はgeogebraに描画していただいたものですが,綺麗ですね.


ここで原点を通る傾き $t$ の直線 $L$ を考えます.

この直線 $L$ は原点の他に,もう一つの点で曲線 $C$ と交わります.連立方程式を立ててその交点 $(x,y)$ の座標を求めると

$$ x = t^ 2-1, \quad y = t(t^ 2 -1) $$

であることがわかります.

逆に曲線 $C$ 上にある,原点以外の点 $Q$ が与えられたとすれば,その点 $Q$ から原点へ直線を引き,その直線の傾きを $t$ とすることによって,実数 $t$ を得ます.

だからどうしたと思うかもしれませんが,これによって実数 $t \in \mathbb{R}$ と曲線 $C$ 上の点を(原点を除いて)一対一に対応させることができます.幾何学的には,原点を通る直線を介して曲線 $C$ を直線 $x=1$ 上に射影しているとみなすことができます.

なるほど?

高校数学で出てきそうな話ですが,実はこれが重要な例になっています.

いまの例を一般化した概念を定義しましょう.

定義: 有理的
$X = V(f)$ は既約な代数曲線とする.このとき $X$ が有理的(rational)であるとは,二つの有理関数 $\varphi(t), ψ(t)$ であって,少なくともひとつは定数でないものが存在して,$f(φ(t),ψ(t)) = 0$ が $t$ についての恒等式として成り立つことをいう.

いまの例により,曲線 $C: y^ 2 = x^ 2 + x^ 3$ は有理的です.

他に有理的であるような曲線の典型的な例として,円 $x^ 2 + y^ 2 -1 =0$ があります.高校で習ったかもしれませんが,

$$ x = \frac{ 2t }{t^2+1}, \quad y = \frac{ t^2-1 }{t^2+1} $$

とおけば $k(t)$ 上の元として $x^ 2 + y^ 2 -1 =0$ が成立します.

コメント: この2つの例を見て,「どんな曲線も有理的なのでは?」と一瞬私は思いました.もちろんそんなことはないようですが,証明しようとすると「どんな有理式を持ってきてもダメ」ということを示さなければならないので,多少理論的なことをする必要があると思われます.少なくとも今のところ私は証明方法を思いつきません.


さて,有理的という言葉の定義に戻りましょう.

有理式なので,分母がゼロになる可能性があります.そのような例外的な有限個の点を除けば各 $t \in k$ に対して $(φ(t),ψ(t))$ は $X$ の元になっています.これはまあ当たり前ですね.

つまり $X$ が有理的であるならば,ある有限集合 $F \subseteq X$ が存在して有理関数 $k \to X \setminus F$ が定義されるわけです.

実は,$k$ の側からも有限個の点を適宜除くことにより,この対応は全単射になります.

コメント: お互いに有限個の点を除けば全単射になるということの証明は,後で示すと書いてありました.これはそこそこ非自明なことのような気がします.


本はさらにこう続きます.「逆に,パラメーター $t$ は $x,y$ の有理関数として表される」

コメント: なぜなのかわかりませんでした.全単射 $g: k \setminus D \to X \setminus F$ が存在していて,除いているのはそれぞれ有限集合で,かつ $g$ が有理関数だとしたら,$g$ には逆関数 $h$ が存在していて,しかも $h$ も有理関数だということが成立すると主張しているのでしょうか?有理関数って全単射だったら逆関数も有理関数なんでしたっけ?そんなわけないですよね……. 上記の具体例を見る限りでは,直線 $y = ax + b$ をつかって射影しているわけですから当たり前に見えますが,一般にはそうとは限らないですよね…. 続きを読んでいればそのうちわかると信じて先に進みます.


ところで上記の有理曲線の定義ですが,「有理的でない」ということを示す方法が気になりますね.有理的であることは,単に条件を満たす有理式を示せば(納得がいくかどうかは別として)証明することはできます.しかし,有理的でないことを示すには「どんな有理式でもダメ」といわなければならないので,多少難しい問題であるはずです.

今後,おいおい語られていくでしょう.


係数体

有理式 $φ(t),ψ(t)$ の係数がより小さい体 $k_0$ の元であれば,このパラメトライズを用いて曲線上の $k_0$ 点を求めることができるという話が書かれていました.

有理関数によるパラメトライズの応用例だそうです.


置換積分

もうひとつの応用例.有理関数の積分は初等関数になることが知られているため,$g$ が有理的な平面曲線であれば,$g$ 上の点 $(x,y)$ に対して,任意の有理関数 $h$ について

$$ \int h(x,y) \ dx $$

も初等関数として表せる.(つまり求積できる)という話.当たり前といえば当たり前の話ですが,高校では習わなかったので目から鱗というひともいるかも.


感想

まだセクションの途中ですが,いったんここで区切ります.

新しいパソコン(WindowsからMacにしました)にまだまだ慣れなくて大変です.

特にkeyboardの配列が違うのがよろしくない.統一しといてよ!

次回は,既約な2次曲線が有理的であるということを証明する予定です.