パンの木を植えて

主として数学の話をするブログ

対数関数の逆数の積分 - Ex5.6

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\A}{\mathbb{A}} %アフィン空間 \newcommand{\C}{\mathbb{C}} %複素数 \newcommand{\F}{\mathbb{F}} %有限体 \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %自然数 \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} %有理数 \newcommand{\R}{\mathbb{R}} %実数 \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} %整数 %%% 2項演算 %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \]

最近 Sky というオンラインゲームを盛んに遊んでいます.去年あたりに流行っていたゲームで,「今更だけどやってみるかぁ~」って起動したら楽しかったので盛んにやっていた次第です.

Sky 星を紡ぐ子どもたち

Sky 星を紡ぐ子どもたち

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これスクショなんですけど.

キャラが可愛いし,風景も綺麗です.

あと,sky という名前の通りばさばさと空を飛ぶことができます.

このゲームの良いところとして,プレイヤー同士が協力したくなるように作られているので,ひとのやさしさに触れることができるというのがあります.

私も,プレイ開始したその日に親切なプレイヤーに手を引いてもらって,ゲーム世界を案内してもらいました.

本当に文字通り「手を引いて」案内してくれたんですよ.嬉しいですね.

まぁそのひとは実は怪しいひとだったので後でブロックしましたが,それでも親切に先導してもらえて楽しかったです.

あと,こんなの気に入ってるのは私だけだと思いますが,このゲーム のプレイヤー界隈では初級者のことをというそうです.可愛いですね.「ひよこ」より好きかも.


それはそうとして,Shoup『A Computational Introduction to Number Theory and Algebra』を読んでいきます.

書影を得るためにAmazonのリンクを貼っていますが,この本は著者のHPからPDFが無料でDLできます.単に安いだけでなくとてもおもしろい本なので,興味のある方はぜひどうぞ.

今回やるのは演習問題5.6です.

\[ %%% 黒板太字 %%% \newcommand{\R}{\mathbb{R}} \newcommand{\C}{\mathbb{C}} \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} \newcommand{\F}{\mathbb{F}} \newcommand{\N}{\mathbb{N}} %%% カリグラフィー %%% \newcommand{\calf}{\mathcal{F} } \newcommand{\calg}{\mathcal{G} } %%% 引数を取るもの %%% \newcommand{\f}[2]{ \frac{#1}{#2} } \newcommand{\im}{\operatorname{im} } \]

問題文

Show that for every positive integer constant $k$, $$ \int_2^ x \frac{dt}{(\log t)^ k} = \frac{x}{(\log x)^ k} + O\left( \frac{x}{(\log x)^ {k+1}} \right). $$

回答

それではやっていきましょう.

積分の計算問題のようですが,次あたりでやる問題でこれを補題として使えという指示があります.だから単なる計算問題ではありません.


方針1: $t$ を括り出して部分積分

さて,こういうのは部分積分が鉄板でしょう.

まずは $t$ を括り出してみます.

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} = \int_2^x \frac{(t)' }{(\log t)^k} \ dt $$

とみて計算するわけです.

実際に実行すると,定数部分を無視することによって

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} \leq \frac{x}{(\log x)^ k} + k \int_2^x \frac{dt }{(\log t)^{k+1}} \ dt $$

が得られます.


この式はどうでしょうか?

$x/ (\log x)^ k$ が括り出せたのはめでたいですが, 微妙に届いていないですね.

この後で

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^{k+1}} = O\left( \frac{x}{(\log x)^{k+1}} \right) $$

を示せば証明完了なのですが,これって示したい式を少し弱くしただけの式で,あまり進捗になっていない気がします.


方針2: $\log t$ を括り出して部分積分

別の方針も試してみましょう.

次は $t$ ではなく $\log t$ を括り出して部分積分をしてみましょう.

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} = \int_2^x \frac{t }{(\log t)^k} (\log t)' \ dt $$

とみて積分するわけです.

実際に実行してみると

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} \leq \frac{x}{(\log x)^ {k-1}} + k \int_2^x \frac{t }{(\log t)^{k}} \ dt $$

です.これはかえって遠ざかってる感じですね.この方針はおそらくダメです.


方針3: 置換積分

部分積分はあらかた試したので,今度は置換積分を試しましょう.

次の不等式を使って,置換積分が使える形に帰着しましょう.

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} \leq \int_2^x \frac{x}{t} \frac{1 }{(\log t)^{k}} \ dt $$

この方針に従って計算すると左辺が $O(x \log \log x)$ であることを示すことができますが……これは全然ダメですね.この方針もボツ.


方針4: $x/(\log x)^ {k+1}$ の微分を計算する

ここで一旦気持ちを切り替えていきましょう.

再び示したい式を確認しておきます.これです.

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} = \frac{x}{(\log x)^k} + O\left( \frac{x}{(\log x)^{k+1}} \right) $$

どのように積分を計算するにせよ,$x/ (\log x)^ {k+1}$ の項は積分評価から出てくる可能性が高いです.

それならば,得たい式の方から逆算してみましょう.

$F_k(x) = x/ (\log x)^ {k+1}$ として,導関数を計算してみると

$$ F'_k(x) = \frac{\log x - (k+1)}{ (\log x)^{k+2} } $$

がわかります.したがって

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} \leq \int_{e^{k+2}}^x \frac{\log t - (k+1)}{ (\log t)^{k+2} } \ dt $$

という不等式を使えば,

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^{k+2}} \leq F_k(x) = \frac{x}{(\log x)^{k+1}} $$

が得られます.

良い感じですが,方針1で得られた式と見比べてみるとまだ少し足りません.


方針5: 繰り返し適用

ここで方針1の式を繰り返し適用することを思いつきます.

これによって

$$ \int_2^x \frac{dt}{(\log t)^k} \leq \frac{x}{(\log x)^ k} + k(k+1) \int_2^x \frac{dt }{(\log t)^{k+2}} \ dt + O\left( \frac{x}{(\log x)^{k+1}} \right) $$

が得られるので,先ほどの方針4で得た式を適用して,求める不等式を得ます.

これでおしまいです.


感想

私には難しい問題でした.

おそらく作意はもっとストレートだと思うんですが,思いつかなかったのでこねくり回して示す感じになりました.